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「文章修行」 水上勉 瀬戸内寂聴 共著  光文社
分かりやすくて上品な文章を書きたいと常から思っているのだけれど才能がなくて情けない。

水上勉と瀬戸内寂聴の「文章修行」という対談集を見つけてヒントになればと思って購入した。

残念ながら良い文章を書くためのハウツー本では全くなく(あたりまえか!)、お二人の小説を書くにあたっての心情や、お二人が出会った先輩たちから賜った知恵などのようなことを、こもごも楽しく時には丁々発止で語り合うといった本でした。

大正時代から昭和初期の文豪達(谷崎潤一郎、川端康成、里見とん、小林秀雄、宇野浩二、今東光、円地文子、宇野千代等など個性的な小説家がいっぱい)と付き合う中で培ったことや、色事に理解があって詳しい水上と瀬戸内、仏門から逃げ出した水上と仏門に入った瀬戸内とが仏教についての思いの絡み合いや小説を書くときの心構えのようなことなど、とても面白く心に響くものがたくさんあった。

文章修行として参考になったのは、水上の「文章にはリズムがないといけませんね~」とか瀬戸内の「自分がものを書くときには美文にしようと思ったりして、どうしても気取るじゃありませんか。でも、気取ってはだめだということがわかりましねえ。だから、文章というのは、難しいことを知っていても、やさしい言葉で相手にわかるように書かねばいけないんです。」というところかな。

もっとも私は難しいことは知らないのでその点は易しくしか書けないというのは救われます。が、奥を知っていて易しく書いているのか、表面だけの知識しかないのかはすぐにバレるでしょうね。文章修行の道のりは険しいです。

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〔神父と頭蓋骨〕アミール・D・アクゼル著 林大訳 早川書房
キリスト教では、人間は神が創造されたアダムとエヴァから始まると教えている。
今の時代、粘土細工でお人形を作るように神様がヒトを造られたと信じている信徒はいないであろう。
しかし、聖書に書かれているお話はすべて比喩により書かれた真実であり矛盾はない。とキリスト信徒の私は信じている。

この本は、一流の古生物学者、地質学者にして、類まれなる敬虔なイエズス会士であったピエール・ティアール・ド・シャルダン神父(1881?1955)の、伝記である。
彼は、科学と信仰を融合させた独自の理論を展開した偉人であるが、ダーウィンの進化論を支持したとしてイエズス会本部はもとよりバチカンからもかってガリレオが弾圧されたように異端者として無視され異郷中国に流される。それでも神父は信念をもって信仰を貫き、科学と宗教を統合しようと多くの論文を書き、イエズス会からは発表を禁止されても奮闘を止めることはなかった。
幸運にもティアールは流された中国で、北京原人の頭蓋骨を掘り出す大発見に立ち会う。
第二次世界大戦中のことで、その頭蓋骨の保存場所についても混乱が起きる。日本?中国?アメリカ?

救い主キリストの誕生を祝うクリスマスが目前にせまっています。
この日のミサでヨハネによる福音を朗読されることが多い。
<はじめに御言葉があった。御言葉は神とともにあった。御言葉は神であった。万物は言葉によって造られた。造られたもののうちに、ひとつとして言葉によらずに造られたものはない。・・・・>

いつピテカントロプスやホモ・サピエンスは、現世人類に変わったのでしょうか?
いつ私たち人類は、言語、芸術、文学、科学などの能力をもつ生き物に変わったのでしょうか?
ズルズル徐々に進化してきたのでしょうか?

この時期に、この本を読んでとても感銘を受けました。
物語が壮大で上手に本の紹介が出来ませんが、キリスト信徒にとって考えさせられることが多い良書です。


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music.jpg「バーンスタイン」愛をわかちあおう ひのまどか著

ミュージカル「ウエストサイド物語」を、私の世代の人では知らない人はいないと思います。
作曲がレナード・バーンスタインによることを知る人は少しへり、バーンスタインが天才的な名指揮者であり名作曲家であり名ピアニストであったことを知る人は、さらに少ないのではないでしょうか?
と、自分の常識に合わせて発言するのもなんだと思いますが、私はウエストサイド物語がバーンスタイン作曲によることを知っていましたが、この本を読むまで、彼がどんなに偉大な音楽家であったのか知りませんでした。

ウエストサイド物語の舞台はニューヨークの下町ウエストサイドで、そこで繰り広げられる白人とプエルトリコ人の縄張り争いの中に生まれたロミオとジュリエットのような悲恋がテーマです。

ブロードウェイでの初演(1954年)を喝采のうちに終え翌日のニューヨークタイムズでは
「このミュージカルは大都会が持つ緊迫感、不安、けばけばしさが感じ取れる。バーンスタインの音楽は強烈なリズムと不安で息が詰まるようなメロディから、美しい詩情に溢れる歌まで幅広く、極めて印象的である。舞台はスピード感と爆発するようなエネルギーに満ちている。これはドラマと音楽とダンスと舞台の全てが見事に溶け合い一体となったものであり、アメリカのミュージカル史を変える画期的な作品である。・・・云々」(本文147ページから抜粋)
と絶賛されたそうです。

その後1961年、ジョージ・チャキリスとナタリー・ウッドの主演で映画化され、多感なお年頃だった私は、もう夢見るごとく夢中になり4回も映画館に足を運んだのです。

なんと著者のひのまどかさんは、1964年ブロードウェイが総勢49人のキャストを引き連れて初来日した時、オーケストラの一員として、日生劇場でウエストサイドを弾いておられたという!凄い!

とりたててクラシック音楽ファンでない人々をここまで引き込むのは、バーンスタインの音楽には彼の類まれな音楽的才能のベースに、彼の生き様が深く反映されていて、どんな境遇の人の心にも響くものがあるのではないかと思います。

この本を読んで、ウエストサイド物語は彼の持つ音楽のごく1部分であることが分かりました。
もっと彼の作品や彼が指揮する交響曲に耳を傾け彼からのメッセージを受けたいと思いました。

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アフガン.JPGアフガンとの約束 中村哲・澤地久枝(聞き手)対話集 副題・人は愛するに足り、真心は信ずるに足る

今日17日アフガン旅客機(40人乗り)墜落のニュースが飛び込んできた。外国人乗客がいる模様とのこと。
まさか中村哲さんは乗っていらっしゃらないでしょうね。

1982年以来26年に渡りアフガニスタンで活動を続けておられる中村哲医師を心底から尊敬しています。

戦争にまつろう真摯なノンフィクション本を世に出しておられる澤地久枝さんも同じお気持ちで、今回澤地さんのたっての願いで始まったこの対話集が版行されました。

澤地さんは、「なんとか中村医師のお役に立ちたい」と考え、師のことを紹介する本を作って多くの人が中村医師の事業に目を向けるきっかけを作りたいと思われたとのことです。

澤地さんの優しさから巧みに引きだされる真剣で真面目な誘いかけに、中村医師はこれまで語らなかった心の根底にある思いを静かに話され、読者は本書のいたるところで深くて鋭い箴言に出会うことになる。

日本社会に欠けていることは何なのか?何故中村医師は人生の大半をアフガンの活動に捧げられたのか?

中村哲医師の活動を知っている人も知らない人も是非読んで欲しい1冊です。

あ、医師のことをご存じない方は、先に中村哲医師の著作、例えば「ダラエ・ヌールへの道―アフガン難民とともに」などを読まれてからの方がいいかも。

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hesse1.jpg庭仕事の愉しみ ヘルマン・ヘッセ 著
ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)は、ノーベル文学賞も受賞した著名な詩人であり作家である。私は「車輪の下」を若い時に読み、いたく感動したことがある。

この本はヘッセが亡くなって30年もの後の1996年にヘッセ研究者フォーカル・ミヒェルスにより編集され岡田朝雄により翻訳された。

ヘッセは後半生を庭仕事と執筆に費やしてすごした。
ヘッセは庭に佇みつつ、観察し思考する。

私自身、庭仕事をしていていつも感じることは、植物を育てることは子育てに通じるということと、生き物(人間も含め)の生死について深く考えさせられることである。

ヘッセは言う。「土と植物を相手にする仕事は、瞑想するのと同じように、魂を解放させてくれるのです。」

とても100年も前の記述とは思えない珠玉の1冊です。

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「もっとおもしろくても理科」清水義範 著  西原理恵子 絵
清水博士が理科のお勉強を笑いながら楽しく伝授する本。挿絵をハチャメチャな漫画家サイバラが入れる。
10の項目(進化論やロケットやビッグバンなど)があるけれど、中でも[遺伝子とDNAと生物たち]が、面白かった。

遺伝子については、理科の授業で興味深く習った記憶はある。XYとXXの関係ですよ。
DNAについては、最近犯罪の決め手にするのになくてはならないものになっているけれどよく分からない。「重力ピエロ」にも詳しく説明されていたけれど仕組みは難しい。
遺伝子とDNAの関係は、この本の解説によると、「染色体の中にDNAがあり、DNA中にある遺伝情報を伝える単位の一つ一つが遺伝子であるらしい」ということであるらしい。

もっとも清水博士自身は理学博士ではなく、本人勉強しながら書いているエッセイだから、一緒に「へ?ぇ。そうなんだ。」と冗談を聞きながら楽しくも深く学べるのであった。
サイバラ画伯はもうさっぱり分からんというノリで、ナンセンス漫画を挿入し思考を撹乱させ、真理がなかなか理解出来ない私を安心させる。

「DNA検査により犯人で無いことが実証された」あるいは「犯人であることが実証された」とよく言われるが、理屈もあいまいなまま納得していた自分を恥じた。
考えてみれば、賢いお人がおっしゃることに間違いないと、物事を鵜呑みにするのも危険なことでもありツマラナイ事だったなと思った。

これからは、物事の真相に迫る思考回路をもつよう頑張ろうと少し思ったけれど、物事をあいまいにするタチの私には出来ないだろう。

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「クアトロ・ラガッツィ」 若桑みどり著 集英社文庫(上下)
信長の時代にローマを目指した「天正少年使節」についてはずっと関心があった。
新聞でこの本が、<昨秋突然逝った著者の大佛次郎賞を受賞した懇親の作であり、天正少年使節にまつわる壮大な叙述>と紹介されていたのですぐ飛びついた。

文庫本とはいえ分厚い上下巻で、その上肝心の4少年について各個人の記述は少ない。しかし当時の東西世界の時代的背景・西洋文明と日本文化と権力者の精神的葛藤を膨大な資料を読み解き示しながら4少年の生き様を読者の心にくっきりと浮かび上がらせる技法は見事で凄い本です。

日本の戦国時代末期と帝国化していく世界とがどのような形で邂逅していくのかがリアルに分かり私にとって新しい知識の発見に胸をドキドキさせられ読み進めるのが惜しくなるような感動の本でした。

ただ宣教師の名前や日本の大名の名前とその血縁関係者の名前が漢字の読み方が難しかったりしてややこしい。日本人でも洗礼名で書かれていたりするとそれもややこしい。
だから紙に登場人物と年代を書きながら読みました。

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