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seihai.JPG「聖灰の暗号」(上下) 帚木蓬生 著
13世紀のこと。南フランスのアリエージュ県トゥルーズ地方に起こったキリスト教宗派カタリ派がローマカトリック派から異端とされパコー大司教の指揮のもとで撲滅をめざし大虐殺が行われた。
その史実の報告はカトリック総本山のバチカンの倉庫に忌まわしいものとして今も隠されているらしい。

この本は、日本人の若い歴史研究者の須貝彰がトゥルーズ市立図書館で古い2枚の羊皮紙を偶然発見したことから始まる。
それはカタリ派大虐殺を、弾圧された側から記した中世の貴重な資料だった。
須貝はパリの学会で発表しセンセーションを引き起こし、発表後に不可解な事件が次々と起こる。

羊皮紙に記された迫害の様子は当時パコー大司教とカタリ派の聖職者の通訳をしたドミニコ会修道士レイモン・マルティの手稿によるもので、彼は大司教の言いつけで事実を隠した報告書をローマに送る。納得いかない彼は羊皮紙に事実を書いて隠したのである。最終的に彼も異端者として火焙りの刑をうけ殉教する。

手稿は作者によるフィクションだが、そのような大虐殺の史実は存在する。

日本でも、キリスト教迫害の史実があった。日本の場合は宗教闘争ではなく施政者側からのキリシタン迫害であった。いずれも宗教の名を隠れ蓑にした権力者からの殺戮である。筆舌に尽くしがたい犠牲のうえに成り立つ勝利ではあるけれど、いつの時代も殺される側は勝利を得る。

カタリ派の聖職者による言葉は、愛に満ち説得力がありそれはそれは美しく胸を打つ。代筆者(?)となって記した著者帚木蓬生のことが知りたい。


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「幸福の軛(くびき)」清水義範著
清水義範のカラーからは少々異色に感じる社会派ミステリー。

主人公中原雅之は大学の教育学部の助教授を務めるかたわら、臨床心理学の知識をいかし教育カウンセラーとして社会的にも認められている。

<子どもの声なき悲鳴に耳をかたむける>をかかげ大学の研究室から離れて、自分の教育カウンセリング事務所を開くところから話ははじまる。

少年犯罪・イジメ・虐待の事件にかかわる中での、連続殺人事件。被害者を含む関係者の断片をつなぎ合わせるうち、あぶりだされてくる社会の暗部。

問題行動を起こす子どもの背景には、壊れた家族・壊れた社会がある。熱心なカウンセラーである中原自身の中にも潜む暗い深層心理もかぶせて事件が解き明かされていく。

最後に分かる意外な犯人。

著者の作品の中にいつも見え隠れする皮肉な社会の裏表が、ユーモアではカバーできない深刻な問題として浮かび上がります。

教育学出身の著者として、教育に対する問題意識をも提議する読み応えのあるミステリー小説でした。

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「深泥丘奇談」  綾辻行人著 メディアファクトリー発行
新聞で紹介されたのを見てすぐ買いました。
京都に私が子どもの頃からよく知っている今でも独特の風情を残している深泥池(ミドロガイケ)というところがあり、その近辺で起こるシュールなミステリーというのが面白そう、、と思ったからです。
帯には、<作家が住まう“奇妙な京都”を舞台に、せめぎあう日常と超常、くりかえす怪異と忘却、、、。
読む者にも奇妙な眩うん感をもたさずにはおられない、たぐい稀なる怪談絵巻。>とあります。
まず本の装丁が凝っていて素敵、イラストが何ともいえない雰囲気をかもし出す墨絵でしかも可愛い。
こわ?い話ではあるけれどユーモアがたっぷり。
深泥池が深泥丘。比叡山が紅叡山。五山の送り火の大文字山が人文字山。怪しい病院が舞台になっているが、私はあの辺に、今では差別用語で口に出来ないが<気狂い病院>とヒソヒソ言っていた病院が昔あったことも知っている。
つまり京都のあの辺のことを知っている読者は倍は楽しめます。
それぞれ関連させながらの短編9編からなりますが、サムザムシという話が一番面白かった。
これから読む人のために内容は言いませんが虫歯のムシがヒント。
綾辻行人という作家を知らなかったけれどファンになりました。他の本も読んでみたい。

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