ミステリーの最近のブログ記事

「カッコウの卵は誰のもの」東野圭吾著
文句なしに面白かった。

最近の犯罪で欠かせないのが、犯人の割り出しの動かぬ証拠となる遺伝子DNAの検査である。ミステリー小説では、その検査でのトリックがミステリーの謎解きに使われるることも多い。以前紹介した「重力ピエロ」伊坂幸太郎著もそうだった。

昔から血液型で親子である証を見つけていたものだが、DNAの一致は紛うことなく親子であることを証明できる。


その遺伝子は複雑でその組み合わせによっては考えられないような能力を引き出すことが出来るのである。例えばオリンピック選手などのトップアスリート達の子どもは、運動能力などに、普通の人以上の遺伝子を受け継いでいる可能性があり、トップアスリートの子どものDNAを調べ、その遺伝子を見つければ幼児のころからトレーニングさせ、世界のトップに立てる選手を育てることが出来るのではないかと言うのである。


そこでそのことを研究する者が研究所組織をたちあげ、そのような有望な子どもを見つけお金をかけて育てることを考えた。奨学金を得られるから、好きでもないスキーのトレーニングに精を出しぐんぐん記録を伸ばす少年。スキーが好きだから必死になって記録を伸ばそうと努力するのに伸びない少年。

「カッコウは誰のもの」はその有能な遺伝子を持つ子どもをカッコウがひよどりにタマゴを預けるように、誰かが誰かに預ける又は誰からが預けられたというようなことが、スキーのアスリート養成を舞台に繰り広げられるミステリー小説である。

オリンピック選手にまではなったけれど入賞を果たせなかった緋田の娘風美には、自分にはない才能があることを見抜く父親。自分の子どもではないのかもしれない。妻は風美が2歳の時謎の自殺をする。湧き起こる疑問。

登場人物に極悪人はいない。あるのは家族愛。でも、怖い話である。

複雑なストーリーが絡み合って上手に紹介できないけれど、科学が進みすぎ神秘な部分が薄れていく時代の恐ろしさ怖さを考えさせられながら、私の好きなスキーの技が爽やかな動きを見せてくれて面白く読ませてもらった。

お奨め。5つ☆。

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「誰か」 宮部みゆき著 文春文庫
高層マンションをみあげるある街角で、1人の老人(65歳)梶田信夫が佇んでいたところ、フルスピードでやってきた自転車にはねられ打ち所が悪く死亡する。自転車に乗っていた人はそのまま走り去ってしまう。

梶田は、5年ほど前に妻を亡くし結婚直前の娘聡美と妹梨子との3人で暮らしていた。
彼は今多コンツェルンという大会社の会長の専属運転手であった。

79歳になる会長の今多嘉親はバリバリの実力者でありその娘菜穂子の婿である杉村三郎が、会長の命によって事故の真相を調べることになった。

杉村は昔映画館で痴漢にからまれた菜穂子を助けたことから愛が育ち、結婚ということになり、結婚を期にこれまで勤めていた児童書の出版社から今多コンツェルンの広報部に転職する。急にお金にも不自由しなくなり豪邸に住むことになったのだが、大会社の娘婿であることに常に引け目を持っていた。

この「誰か」というミステリー小説は、平凡で善良な杉村が素人ながら事件の真相を探っていくことから登場人物の生い立ちなどが解明されていくのですが、ワクワクドキドキすることが全くなかった。

登場人物全てがここまで魅力のない小説は珍しいのではないかしら?私個人の好みによるんでしょうが。ミステリーで極悪人がないというのもどんなもんでしょうか?

ケイタイの着メロが同じということから彼と彼女が付き合っているということを見破る手口もあまりにも陳腐。

<平凡な生活の小さな事件から深みにはまる、宮部みゆきの真髄>と推奨されていましたが、もっともっと深いところに沈んでいる真相をえぐり出してほしかった。

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「黒い春」 山田宗樹 幻冬舎文庫
―あらすじ(ブックカバーより抜粋)-
覚醒剤中毒死を疑われ監察医務院に運び込まれた遺体から未知の黒色胞子が発見された。
そして翌年の5月、突然口から黒い粉を撒き散らしながら絶命する黒手病と名づけられた犠牲者が続出。対応策を発見できない厚生省だったが、1人の歴史研究家にたどり着き解決の発端をつかむ。そして人類の命運を賭けた戦いが始まった・・・。傑作エンタテイメント巨編。

未知の病原菌。
医学の発達は目覚しく、心臓病や癌による生存率はたかまっているようだが、これからの時代、未知なる病原菌による死亡率も高まってくるのではないかという恐怖を覚える。
一つは東日本つなみ大震災による原子力発電所の破損が人間にどのような影響をおよぼすのか、皆目わからないことが人々に不安感を呼び起こしている。

「黒い春」が書かれたのは震災以前のことであるが、未知なる病にたいする恐怖を充分つたえてくれる。
病原菌発生の場を突き止めるところにまではいったけれど、病原菌に犯された患者の救済まではいかなかった。
又その病原菌の発生は、どうも小野妹子の遣隋使にひそむ謎とも関わっているらしいという史実にも行き着く。
病原菌の発生は昨日今日に起こったのではなく長い長い道をたどって今に伝わるということも分かる。

現在地球上には異変を誘発する要因は溢れるように存在する。
放射能、酸性雨、オゾン層を破壊する強い紫外線、などなど。

そのような恐怖の現実に向き合って真摯に戦う研究者達、家族愛など、この本には人間同士のつまらない争いをしている場合でない!これからは、人々は力をあわせて未知なる悪と戦っていく時代になったんだよということを思い起こさせてくれ、希望を感じさせられる良書でした。

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「ゴールデンスランバー」 伊坂幸太郎 著 新潮社
アメリカ大統領のケネディ暗殺事件があってもう何年になるだろうか。あの時、オズワルドという男が突然犯人ということで直ちに射殺され事件の幕が降り驚かされた。オズワルドが犯人と信じる人はいなかった。世界中の人が政治的に仕組まれた暗殺事件とおもったものである。今も真相は闇に包まれている。

先日国際テロ組織の指導者ビンラディンがアメリカ大統領の許可のもと殺害されたが、私には意見を言えるほどの知識がないのでわからないけれど、「人間が人間を殺してはいけない」という考えを持っている。

「ゴールデンストランバー」では、金田貞義というぽっと出の男が首相となり、出身地の仙台で祝賀パレードが行われるなか、ラジコン飛行機による爆破で殺されてしまうところから始まる。

青柳雅春というハンサムで朴訥で真面目な青年が犯人に仕立て上げられてしまい、執拗な警察の追い込みと青柳の逃亡劇が繰り広げられる。

権力を守るためには勝手に犯人を仕立て上げ手段をえらばず追う警察、事件を面白おかしく煽るマスコミ。青柳は大学時代のクラブの数少ない同輩と後輩の協力、又下積みの労働者が理解してくれ逃亡の手助けをしてくれたりして、ギリギリのところで生き逃れていく。

文章の構造も面白く、犯人逮捕と言う名のもとに行われる交通規制や携帯電話やネットなどの情報のコントロールは、真実味があり怖ろしい。息をつかせず2日間で一気に読みました。

著者の「重力ピエロ」(2009/5/18にアップ)も、映画化されたけれど、この本のほうが映画化されると面白いかもと思って読んでいましたら、もう映画化されていました。主人公の青柳雅春役は堺雅人でした。観てみたいな。

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〔償い〕 矢口敦子 著 幻冬舎文庫
主人公の日高英介は優れた脳外科医だったが家庭をかりみず、3歳になる息子を手遅れからインフルエンザ脳症で亡くし、妻は悲しみを理解しない夫に絶望し自殺をしてしまう。
己の愚かさに気付かされた日高は医師を辞めホームレスになって町をさ迷う生活をはじめる。
流れ着いた郊外の町で、社会的弱者ばかりを狙う連続殺人事件に巻き込まれる。そこで12年前に自分が命を救った15歳の少年にめぐり会い言葉を交わすようになるが、少年が犯人ではないかと疑いはじめる。

少年は言う。「不幸な人間は死んだ方が幸せなんだよ。死ぬと不幸が終わるんだから。」驚いた日高は言う。「どんな人であっても、不幸のまっただ中で死ぬなんて、そんな悲しいことをさせちゃいけないよ。人は最後の時には、幸福でなけりゃ。笑って死ねれば、どんな人生にマイナスがあったとしても、そこでプラスに逆転するんだ。」

日高の心には、不幸の真っ只中で死を選んだ妻のことが心によぎる。「人の肉体を殺したら罰されるけれど、人の心を殺しても罰せられないのは不公平ではないか。自分は妻を殺したのも同然だ、、、。自分は裁かれるべきなんだ。その償いを果たすことが出来るんだろうか?」
もし少年が殺人をおこしているとなれば、「私は取り返しのつかない過ちを犯したのだろうか。善を行ったつもりで、悪を行ったのであろうか」と日高は深く悩む。

「償い」は、殺人犯を追うミステリー小説と一言では言えません。精神や心の問題を重要なテーマとした小説です。

さてさて、絶望を抱えて生きる二人の魂は救われるのか?事件の真相はいかに?

感動の長編ミステリーでした。

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「告白」湊かなえ著
これも話題のベストセラー。松たか子主演で映画化された。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」という中学の女性教師によるホームルームでの告白からこの物語は始まる。

語り手が、女子教師、級友、犯人、犯人の家族と次々に変わりながら事件の真相が暴かれていく。

女教師のぶれない主張。事故死扱いにした警察には訴えずに刑より厳しい制裁を犯人の生徒になげかける。

教師。生徒。親。それぞれの心情がすっきりと書かれていて「なるほどなぁ」と納得できる。

ラストの衝撃的などんでん返しには意表をつかされ楽しめた。

ミステリーでありながら爽やかさを残す読後感を味わった。
これは映画を観るとがっかりするんではないかな。

「悪人」より数倍面白かったです!
お勧めです。

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seihai.JPG「聖灰の暗号」(上下) 帚木蓬生 著
13世紀のこと。南フランスのアリエージュ県トゥルーズ地方に起こったキリスト教宗派カタリ派がローマカトリック派から異端とされパコー大司教の指揮のもとで撲滅をめざし大虐殺が行われた。
その史実の報告はカトリック総本山のバチカンの倉庫に忌まわしいものとして今も隠されているらしい。

この本は、日本人の若い歴史研究者の須貝彰がトゥルーズ市立図書館で古い2枚の羊皮紙を偶然発見したことから始まる。
それはカタリ派大虐殺を、弾圧された側から記した中世の貴重な資料だった。
須貝はパリの学会で発表しセンセーションを引き起こし、発表後に不可解な事件が次々と起こる。

羊皮紙に記された迫害の様子は当時パコー大司教とカタリ派の聖職者の通訳をしたドミニコ会修道士レイモン・マルティの手稿によるもので、彼は大司教の言いつけで事実を隠した報告書をローマに送る。納得いかない彼は羊皮紙に事実を書いて隠したのである。最終的に彼も異端者として火焙りの刑をうけ殉教する。

手稿は作者によるフィクションだが、そのような大虐殺の史実は存在する。

日本でも、キリスト教迫害の史実があった。日本の場合は宗教闘争ではなく施政者側からのキリシタン迫害であった。いずれも宗教の名を隠れ蓑にした権力者からの殺戮である。筆舌に尽くしがたい犠牲のうえに成り立つ勝利ではあるけれど、いつの時代も殺される側は勝利を得る。

カタリ派の聖職者による言葉は、愛に満ち説得力がありそれはそれは美しく胸を打つ。代筆者(?)となって記した著者帚木蓬生のことが知りたい。


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「幸福の軛(くびき)」清水義範著
清水義範のカラーからは少々異色に感じる社会派ミステリー。

主人公中原雅之は大学の教育学部の助教授を務めるかたわら、臨床心理学の知識をいかし教育カウンセラーとして社会的にも認められている。

<子どもの声なき悲鳴に耳をかたむける>をかかげ大学の研究室から離れて、自分の教育カウンセリング事務所を開くところから話ははじまる。

少年犯罪・イジメ・虐待の事件にかかわる中での、連続殺人事件。被害者を含む関係者の断片をつなぎ合わせるうち、あぶりだされてくる社会の暗部。

問題行動を起こす子どもの背景には、壊れた家族・壊れた社会がある。熱心なカウンセラーである中原自身の中にも潜む暗い深層心理もかぶせて事件が解き明かされていく。

最後に分かる意外な犯人。

著者の作品の中にいつも見え隠れする皮肉な社会の裏表が、ユーモアではカバーできない深刻な問題として浮かび上がります。

教育学出身の著者として、教育に対する問題意識をも提議する読み応えのあるミステリー小説でした。

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「深泥丘奇談」  綾辻行人著 メディアファクトリー発行
新聞で紹介されたのを見てすぐ買いました。
京都に私が子どもの頃からよく知っている今でも独特の風情を残している深泥池(ミドロガイケ)というところがあり、その近辺で起こるシュールなミステリーというのが面白そう、、と思ったからです。
帯には、<作家が住まう“奇妙な京都”を舞台に、せめぎあう日常と超常、くりかえす怪異と忘却、、、。
読む者にも奇妙な眩うん感をもたさずにはおられない、たぐい稀なる怪談絵巻。>とあります。
まず本の装丁が凝っていて素敵、イラストが何ともいえない雰囲気をかもし出す墨絵でしかも可愛い。
こわ?い話ではあるけれどユーモアがたっぷり。
深泥池が深泥丘。比叡山が紅叡山。五山の送り火の大文字山が人文字山。怪しい病院が舞台になっているが、私はあの辺に、今では差別用語で口に出来ないが<気狂い病院>とヒソヒソ言っていた病院が昔あったことも知っている。
つまり京都のあの辺のことを知っている読者は倍は楽しめます。
それぞれ関連させながらの短編9編からなりますが、サムザムシという話が一番面白かった。
これから読む人のために内容は言いませんが虫歯のムシがヒント。
綾辻行人という作家を知らなかったけれどファンになりました。他の本も読んでみたい。

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