八日目の蝉

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「八日目の蝉」 角田光代著 (中央文庫)   

蝉は地中で10年ほど暮らしたのち地上に出て7日で死ぬといいます。そこで死なないで「8日目を迎えた蝉」の運命は、、、。というのでしょうか?面白く読みました。

不倫相手のところに押しかけて6ヶ月の赤ちゃんを盗み出し、自分の子どもとして慈しみながら育てる希和子の逃亡生活の4年間。母子手帳もなく保険もなく怯えながらの生活。何度か危機を脱しながら最後に辿りついたのが小豆島。そこでとうとう誘拐犯として捕まってしまい偽の母娘の関係は終わります。

そこまでが蝉の地上での7日間かな。

それから17年後。ここからが8日目の蝉ということか。

娘の恵理菜は4歳で突然本当の父母と暮らすことになり当惑しながら成長するのですが、実の父母の仲は悪く家庭は荒れていて、偽の母娘のほうが愛が通い合っていたといえる関係だったのだけれど、恵理菜はその時代のことは全く覚えていないのです。そのあげく育ての親と同じようにダメ男と不倫して子どもを身ごもってしまった恵理菜の苦悩。

女・母性・娘の本性を、希和子と恵理菜が出会う人々を通して炙り出されるドラマティックな展開にひきつけられました。

それと男の登場人物は不倫相手の2人だけというのが面白い。とにかくダメ男です。

この本では男という存在はまったく当てにされずもう無視されています。

ダメな男に翻弄されながら真摯に人間を生きる女達の話ともいえます。

不倫や生みの母と育ての母というテーマは小説としてよく取り上げられているけれど、希和子の逃亡生活となる舞台が意表をついていて珍しくて奥が深く感動させられました。

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