新・がん50人の勇気

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「新・がん50人の勇気」 柳田邦男 著

<迫り来る死を前に人はいかに生きるか・・・
 昭和天皇から本田美奈子まで、
 がんと向き合った作家、俳優、音楽家、学者、僧侶、企業人、
 50余名の「生と死」のかたち
最期の瞬間まで生を全うした 感動のドキュメント >・・表紙より

50余名のうち特に心が打たれた方々は 武満徹、山本七平、森瑤子、重兼芳子、米原万里、馬場のぼる、山口瞳、山本夏彦達の最期だった。

この本に取り上げられた方々は全て「たとえ世界が明日終わりであっても、私はリンゴの樹を植える(マルティン・ルッター)」という言葉をそのまま受けとり、壮絶であり同時に崇高な死を堂々と迎えられたのだと感銘を受けた。

自分の育てるリンゴに生涯こだわり、愛し、誇りを持ち、さらに良いリンゴを育てることに情熱をもって生きてこられた。そしてがんに倒れ、もうリンゴを育てられない身体になったことを悟ってからも、明日も植え続けうる体力を求めて副作用の多い抗がん剤治療を拒否し、民間療法とモルヒネによる痛み緩和を求め、延命よりリンゴを植え続ける気力保持を求めたかたが多かった。

又、宗教をもたない方も多かった。死後の世界は「無」と考え、命を神にゆだねるという考えは少なかった。中には高田真快和尚や高田好胤僧侶の宗教家や死を迎える前にカトリックの受洗をされた森瑤子さんのような方もおられたが。
無宗教のかたは、宗教を「苦しみから逃れる方便」であると考え、「神に頼ることは負け」というような宗教観を持っておられるのではないかと思った。
私は、人間の生死には宗教が欠かせないものと思っているので違和感を持った。

その点では、柳田氏は、理屈や科学では解明できないより優れたものの存在をいつも重要視して、人の生死の裏に隠された無視できない真実を書き添えられている。
「不思議な意味のある偶然」を、決して疎かに出来ないエピソードを同時に綴られている。

白血病で亡くなった兄の最期を思いおこし、膵臓がんと闘っている愛する人の姿をクロスさせながら読んで、深く考えさせられた良書であった。

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