生きています,15歳。

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生きています,15歳。 井上美由紀 著 POPLAR
井上美由紀さんは、頭は卵ぐらい指はつまよう枝位の手のひらにすっぽり納まるちっちゃな赤ちゃんで生まれました。500gという超未熟児で、未熟児網膜症に罹り全盲となりました。

全盲というハンディを背負い母親と二人三脚で15年。その生き様を「母の涙」という題で弁論大会で話し、全国盲学校弁論大会で優勝するまでに成長した道のりの手記です。

美由紀さんのハンディは全盲というだけではありません。美由紀さんがお母さんのお腹にいる時結婚の約束をしていた父親が突然交通事故死をし、そのショックで母親は早産して、彼女は未婚の母に育てられたのです。
父親の両親からも母親の親からも断絶され完全に二人ボッチの出発でした。

目が見える人ばかりで形成されているこの世界で、全盲の子が生きていかねばならないのです。
母親はこの現実を「尊い娘の命を授かった」という喜びと感謝で受け止め、娘がこの世界で自立していけるように、子供自らの努力と、距離をおいた手助けだけで、自立を身に付けさせるための子育てに徹するのでした。

傍の人からみると,又娘にとっても「鬼母か、、。」と思われながら娘を新しい挑戦に挑ませ、目的を一つ一つ達成させて娘に「自分でゲット出来た喜び」を味あわせてあげながら育てるのです。

例えば、自転車に乗れるようになるための特訓。立木や看板にぶつかったりして何度も何度も転んで血だらけになりながら自転車を起こしては頑張る娘に対し、母親はベンチに座って、「はやく起きなさい。ハンドルをちゃんと持って!」と叫ぶだけなのです。娘は「なんちゅう親か。それでも母親か」と悪態をつきながら30回ぐらい試すうち、<ふっとスイスイ風を切って走っている自分>に気がつくのです。
そして親子で泣きながら抱き合い、母は「美由紀。よく頑張ったね。なんでも根性やろ。やろうと思ったらできるやろ。」と誉めます。
一つづつ自分の力で、出来ないことが出来るようになったことの喜びを身に付けさせてあげることを繰り返します。

美由紀さんの逞しさには感動するばかりですが、どちらかと言うと母親の確固とした子育てにたいする考え、と情熱が娘をここにまで育てることが出来たんだろうと思います。

全盲ということは一つの特徴・個性であり、健常者と全く変わらない<一人の普通の人間>であることを母親はしっかり認識し、全盲であるために不自由なことは工夫しながらクリアー出来る方法を自分で見つけ出せるようにする手助けをすることに徹っせられた姿には感動しました。

私たちラリグランスクラブでサポートしているネパールの全盲のマドゥさん、ルパック君、シャルミナさんと付き合っていくときに忘れてはならないことをたくさん気付かせてくれた本でした。

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