児童書の最近のブログ記事

「8つの物語」フィリッパ・ピアス著 片岡しのぶ訳 あすなろ書房
英国のファンタジー児童書の名手、フィリッパ・ピアスの物語は、本当に心に響きます。大好きです。
と言いながら、この前紹介した「黄色いボール」は検索してみると2008年7月のことで、5年も前のことでした。

今回紹介する「8つの物語」は、「ロープ」「ナツメグ」「夏の朝」「まつぼっくり」「スポット」「チェンバレン夫人の里帰り」「巣守りたまご」「目をつぶって」の8編の短編集です。(副題は思い出の子どもたちです。)

どれも<無垢な子ども>と<常識的な大人>からなる普通の家庭で起こる、子どもにとっては重大な、大人にとってはささいな出来事なのですが、大人と子どもの心にある深い思いが会話からもあぶりだされ胸をうちます。

背景は田舎のおばあちゃんの所に都会から遊びに来る子どもと、田舎の子どもとの付き合い、微妙な食い違い、それに気付かない善良な大人からなる物語が多く、その環境が私自身のそれに似通っているので、すごく共感を覚えるのです。

物語に出てくる少年少女から、私の子ども時代の夏の山の家で過ごした体験、物語に出てくるおばあさんからは、今の私が孫に話す言葉。

8つの物語全部を紹介したいのですが、まあ、読んでくださいよ。楽しくなること請合います。

ちなみにこの本はアマゾンから中古1円送料250円で買いました。

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日本童謡集 与田準一編 岩波文庫
近所の児童書専門店の店主さんと話が盛り上がり、最後に薦められて買いました。

童謡童話雑誌「赤い鳥」の創刊(大正7年)から昭和20年の終戦に至る30年間に発表された創作童謡の中から300余篇を選び編纂された本です。

私が知っていて一番古い童謡は、北原白秋作詞「雨」。大正7年9月の作だそうです。
私が生まれる25年も前の歌です。
♪雨がふります 雨が降る
遊びにゆきたし 傘はなし
紅緒の木履(カッコ)も 緒が切れた・・・♪
知らなかった。そんなに古い歌だなんて。小学校の頃、否、大人になってからも雨が降ると雨を見ながら唄ったものだ。

大正8年10月の清水かつら作詞「靴がなる」
♪お手て つないで 野道をゆけば
みんな 可愛い 小鳥になって
唄をうたえば 靴がなる
晴れたみ空に 靴がなる・・・♪
この童謡は、お遊戯も知っています。替え歌も、、。
♪お手テンプラ  つないデコチャン 野道をゆけバリカン、、♪
7?8歳の頃、大きな声でしっかり唄っていたのを覚えています。何処で誰からおそわったのかしら?

昭和7年10月の島田浅一作詞「乳を飲ませに」
♪冷たい 雨の 降る原を、 弟おぶって 行きました。お乳飲ませに 行きました。
冬の カタバミ 咲いていた、小さな 溝を 超える時、足駄の 鼻緒が 切れました。
紐を 捜して いるうちに、 工場で ポーが 鳴りました。3時のポーが 鳴りました。
3時の 休み、 15分、 母さん 待って いらっしゃる、 お乳 はらして いらっしゃる。
鼻緒すげるも じれたくて、私は はだしに なりました。
はだしで 急いで 行きました。♪

この唄を知りませんでしたが、今のネパールの田舎のまずしい子供の姿がだぶりました。
「母さん 待って いらっしゃる。」という敬語の言い回しかたが なんともいえない、愛情と可憐さを呼ぶ。

この本には美しい日本の情景と美しい言葉が、溢れています。
あなたの本棚にも収めてほしいな。

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「こわがっているのはだれ?」 フィリッパ・ピアス著 高杉一郎訳
またピアスです。
「黄いろいボール」は「こわがっているのはだれ?」 の短編集の中の一つです。
この短編集は幽霊が主題になっています。
「黄色いボール」に出てくるのは犬の幽霊です。
コンとリジ-という幼い姉弟が、いつも遊んでいるカエデの古木の洞から、ある日偶然に黄色いボールを見つけます。そのボールで遊んでいると、何かサ?と目の前を横切る影に二人は気付きます。それは犬の幽霊でした。
きっとその犬は、二人が住むずっと前に、いつもその黄色いボールを追いかけて遊んでいたのでしょう。

不思議で怖いお話だけれど、その世界には死んでも生き続ける魂が浮遊し、大ヒットした「千の風にのって」の歌を思い出させる、何かしみじみ考えさせられた短編集でした。

訳者のあとがきによると、ピアスは「私は、スーパーナチュラルの話を書くのが好きです。それは読む人の、恐怖心を書き立てるような話と、スーパーナチュラルの手法を使って、現実の奥の深みにある実体に触れていく話があります。私はスーパーナチュラルの手法を使わない限り、物語で人間のかかわりあいを深く探ることは出来ないと幾たびとなく考えてきました。」と話しておられたそうです。

今私は木々に囲まれた蓼科の古びた山荘で生活しているのですが、今日もテラスで本を読んでいると、苔むした岩の後ろから4年前に死んだ愛犬が顔を出してじっとこちらを見ているような気がして、ふ?と懐かしさがこみ上げてきました。それで夏休みにやってくる小さな孫達のために下草を刈り、木登りやハンモックで楽しめるように山荘の周りを整備したのでした。朽ち果てそうになっている犬小屋はそのままにして。

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ピアス短編集:まよなかのパーティ  フィリッパ・ピアス著 猪熊葉子訳

元小学校教諭Yさんが体調を崩してしまい、何年ぶりかで読んだフィリッパ・ピアスの本で癒されたと聞いたので早速図書館で「ピアス短編集」を見つけて読んだ。

フィリッパ・ピアスは児童書作家として有名だそうだけれど私は知らなかった。1985年に出版された本だけれど今作者が存命なのかどうかも知らない。
いずれも作者が育ったイギリスのケンブリッジにほどちかいグレート・シェルフォードという所の田園での生活が舞台で、日々冒険の中から成長していく子供を中心に分別ある大人を脇役にして展開される。

8つの短編が集められているが私は中でも「川のおくりもの」が面白かった。
10歳ぐらいの男の子ダンとロンドンから遊びにきた7歳ぐらいのローリーという従兄弟の話である。

生物好きのローリーが来るといつも遊んであげる小川で今回も二人で遊んでいると、珍しいイシガイをダンが見つけた。珍しい生き物を見つけた時の感動や、所有権にまつわる可愛らしい取引、年長者ダンの気持ち、弟分の気持ちなどがごく普通に淡々とえがかれている。

ローリーはいつも、川で見つけた川えびなどをジャムのビンに入れてロンドンに持って帰り、水槽で飼っている。ダンは見つけたイシガイをローリーにあげるとは言ったものの惜しくなっている。
そのへんの子供の心理がとっても可愛らしくかかれていて感動しました。

この本は児童書の分野だけれど子育てに関わる大人が読むほうが面白いのではないかな。
10歳の孫達とその親に贈って反応を見てみよう。

この舞台になっているグレート・シェルフォードは現在も豊かな田園が広がっているのだろうか?
昔の子供たちが自然の中から学び成長していったように、今の子供たちが豊かに育っていくための舞台はどこにあるのかしら?

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