2010年5月アーカイブ

music.jpg「バーンスタイン」愛をわかちあおう ひのまどか著

ミュージカル「ウエストサイド物語」を、私の世代の人では知らない人はいないと思います。
作曲がレナード・バーンスタインによることを知る人は少しへり、バーンスタインが天才的な名指揮者であり名作曲家であり名ピアニストであったことを知る人は、さらに少ないのではないでしょうか?
と、自分の常識に合わせて発言するのもなんだと思いますが、私はウエストサイド物語がバーンスタイン作曲によることを知っていましたが、この本を読むまで、彼がどんなに偉大な音楽家であったのか知りませんでした。

ウエストサイド物語の舞台はニューヨークの下町ウエストサイドで、そこで繰り広げられる白人とプエルトリコ人の縄張り争いの中に生まれたロミオとジュリエットのような悲恋がテーマです。

ブロードウェイでの初演(1954年)を喝采のうちに終え翌日のニューヨークタイムズでは
「このミュージカルは大都会が持つ緊迫感、不安、けばけばしさが感じ取れる。バーンスタインの音楽は強烈なリズムと不安で息が詰まるようなメロディから、美しい詩情に溢れる歌まで幅広く、極めて印象的である。舞台はスピード感と爆発するようなエネルギーに満ちている。これはドラマと音楽とダンスと舞台の全てが見事に溶け合い一体となったものであり、アメリカのミュージカル史を変える画期的な作品である。・・・云々」(本文147ページから抜粋)
と絶賛されたそうです。

その後1961年、ジョージ・チャキリスとナタリー・ウッドの主演で映画化され、多感なお年頃だった私は、もう夢見るごとく夢中になり4回も映画館に足を運んだのです。

なんと著者のひのまどかさんは、1964年ブロードウェイが総勢49人のキャストを引き連れて初来日した時、オーケストラの一員として、日生劇場でウエストサイドを弾いておられたという!凄い!

とりたててクラシック音楽ファンでない人々をここまで引き込むのは、バーンスタインの音楽には彼の類まれな音楽的才能のベースに、彼の生き様が深く反映されていて、どんな境遇の人の心にも響くものがあるのではないかと思います。

この本を読んで、ウエストサイド物語は彼の持つ音楽のごく1部分であることが分かりました。
もっと彼の作品や彼が指揮する交響曲に耳を傾け彼からのメッセージを受けたいと思いました。

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アフガン.JPGアフガンとの約束 中村哲・澤地久枝(聞き手)対話集 副題・人は愛するに足り、真心は信ずるに足る

今日17日アフガン旅客機(40人乗り)墜落のニュースが飛び込んできた。外国人乗客がいる模様とのこと。
まさか中村哲さんは乗っていらっしゃらないでしょうね。

1982年以来26年に渡りアフガニスタンで活動を続けておられる中村哲医師を心底から尊敬しています。

戦争にまつろう真摯なノンフィクション本を世に出しておられる澤地久枝さんも同じお気持ちで、今回澤地さんのたっての願いで始まったこの対話集が版行されました。

澤地さんは、「なんとか中村医師のお役に立ちたい」と考え、師のことを紹介する本を作って多くの人が中村医師の事業に目を向けるきっかけを作りたいと思われたとのことです。

澤地さんの優しさから巧みに引きだされる真剣で真面目な誘いかけに、中村医師はこれまで語らなかった心の根底にある思いを静かに話され、読者は本書のいたるところで深くて鋭い箴言に出会うことになる。

日本社会に欠けていることは何なのか?何故中村医師は人生の大半をアフガンの活動に捧げられたのか?

中村哲医師の活動を知っている人も知らない人も是非読んで欲しい1冊です。

あ、医師のことをご存じない方は、先に中村哲医師の著作、例えば「ダラエ・ヌールへの道―アフガン難民とともに」などを読まれてからの方がいいかも。

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aria.jpg  星の国のアリア ひのまどか著
よそのお宅にお伺いしたとき書棚があると覗き見するのが好きです。
並べられた本を見ると持ち主の心の中が見えるようで興味深いのです。

先日義姉の所に行ったら本棚にひのまどかさんの音楽の本(主にクラシック音楽作曲者の自伝小説)がずらりと並んでいるので、「ああ、音楽好きの義姉だからなあ」と思いながら「ひのまどかさんが好きなの?」と訊ねてみると、「ひのまどかさんは私の従姉妹なの」という返事。中でも「星の国のアリア」が面白かったと薦められました。

義姉はコーラスの趣味一筋で生きてきた人なのでオペラの本は面白いかもしれないけれど、私はオペラはどうも苦手だし、、と思ったのですが、せっかくの義姉の薦めだからと読み始めたら面白くてぐいぐい引き込まれました。

興味のない分野の話に読者をここまで引き込ませるのは、ひのまどかさんの文筆が巧みで、時代背景が実に丁寧に分かりやすくえがかれているからではないかと思いました。また著者も芸大で音楽を学ばれ音楽の知識が豊かにあるうえ、音楽表現には欠かせない心情をも深く捉えておられるのが凄いなあと思いました。

さて、「星の国のアリア」は、1905年、リムスキー・コルサコフがロシアでの「血の日曜日事件」と呼ばれる大虐殺のあと一気に書き上げたというオペラ<金鶏>にまつわる物語です。

このオペラは絶賛されたのにかかわらず、独裁者への批判が込められているということで、上演禁止となった幻のオペラでした。

当時スターリンの独裁のもと、それに反発する芸術家は次々と弾圧され抹殺されていた時代で、多くの芸術家は外国に亡命したのですが、その中にロシアで有名だった女性オペラ歌手リーナ・ニコラーエヴナがいました。

リーナは夫と幼い息子の家族3人で日本の音大に招かれ亡命するつもりでしたが、出国直前に夫が急死し母子2人で日本に亡命するはめになり、東京音楽大学に勤めます。1933年のことでした。

やがて息子が結婚し女の子百合が産まれますが、それからリーナは、百合に将来ロシアのボリショイ劇場でオペラ金鶏のプリマ・ドンナとなる夢を密かに託し、オペラ歌手になるように教育するのです。

すくすくと美しく素直に育った百合は東京芸大に進学しオペラ歌手に成長します。

ロシアでは1985年ゴルバチョフのペストロイカ以来言論の自由が認められ幻のオペラ金鶏の復活が実現したのです。

その時ソビエトに留学し音大の大学院生だった百合はオーディションに合格し、ボリショイ劇場で開催される金鶏の復活公演で主役を歌うソプラノ歌手に抜擢されたのです。

という、サクセスストーリーと言えるかもしれませんが、私は声楽については初めて知ることが多く、驚きと感動に満たされながら読みました。

オペラ金鶏を観てみたいとつくづく思わされました。

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